蒸気式

『あ〜温泉に行きたい』
 私は突然にどこか知らない街に行ってみたいと思うことがある。そんなに遠くの街でなくてもいいから、取敢ず出かけてみたい。私のことをその街の人は誰も知っている人はいない。いつもと違った空気の感触を味わいたくてぶらっと出かけてみる。いきなり知らない街に行くのも何だから、温泉に行ってみたい。金曜日の夜にウーロン茶を飲みながら地図を捲ってみたり、旅行読売を片手にどこに行こうかなぁと思案する。出来るだけ静かなところがいいな。交通の便が悪く、寂れた旅館であれば好都合だ。普段便利なところで何不自由なく暮らしているので、こんなときくらい不便で不便でしょうがないようなところに行ってみたい。
 旅館の御飯はおいしくても、まずくてもどちらでもよい。おいしい場合は、「寂れていても御飯はなかなかいけるではないか」と思えるし、まずい場合は「このまずいのがまたこの旅館らしくていい」と思えてくるからだ。しかし、旅館の方達からは親切にされるのがいい。私は客だから偉そうにするとか言うのは嫌いだけれど、「長旅お疲れ様でした。こんなところですけれど、ゆっくり休んでください」のような感じがいい。
 目的地が決定したら必ず電話で確認だ。「あの〜一人でも大丈夫でしょうかぁ?」「はい、大丈夫ですけど」よかった。ちゃんとまえもって確認しておかないと大変なことになる。昔、予約もせずに旅館に飛び込んだところ、どこの旅館でも断られてしまった。結構、あたってみたが全部だめで、結局夜の11時頃にビジネスホテルに駆け込んだという寂しい経験がある。でもそれもよかったけど。なぜなら私は計画を立てて旅行に行くのが嫌いだから。