今日の出来事


夕刻のあわただしい往来でのシーン。

老人が独り、パジャマに素足といういでたちで、道路中央で立ち尽くしている。あたりは暗くなり、自転車や車が無常に行きかっている。
私はその老人に近寄り、おもむろに語りかけた。どうも入院先からの脱走らしい・・と予想される反応があった。しかし、繰り返される言葉には、認知症の様相もある。
今日の冷え込みの厳しさは、このスタイルでは、下手をすると肺炎も起こしかねない。いや、その前に交通事故に遭遇する可能性も高い。
偶然にも、見覚えのあるパジャマはある病院の心あたりが浮かんだので、老人の手をはなさないように、つかんだまま、通報して、迎えを待つ事にする。
あえなく、病院からお迎えの車がきて、老人は安全に保護された。

・・・昨日、読んだ「蜘蛛の糸」が脳裏に浮かんだ。
私の前にも、いつの日かたった一つの善行の報いとして、蜘蛛の糸がたれるのか?
否、蜘蛛の糸は現れなくても、私の中の慈悲を私自信の慰めとしよう。
ゆうげの白いご飯の美味しそうなにおいが、今日一日のご褒美となった。