今日の出来事


田舎の駅に降り立つと、粉雪がわたくしの体を包み込む。田舎はどうしてこんなにも寒いのだろうか。閑散とすら見えるこの町をいっそ寒々しく見せられる。
ここに立つと昔の思い出が頭のなかに浮かんできて、まこと当時そのままの光景が流れ始めるのではないかと思える程である。昭和十二年三月のこの日、小學伍年であったわたくしは駐輪場から自転車を出し、草津村(現中間市)の村役場に向かおうとしていた。思えばこの日はかなりの寒さであった。まだ体も小さかったわたくしは、この黒い鉄の固まりのような大人用の自転車を隣村までこいでいけるのだろうかと不